釣り人と地域が共生する「未来の釣り場」を目指して
第3回インショアフィッシングトーナメント in 宮津 開催レポート

■「消費型」から「持続可能」な釣りへ 意識改革の場が京都府宮津市で始まる
近年、釣り人口の増加に伴い、多くの釣り人がルールやマナーを守って楽しむ一方で、一部の心ない釣り人によるゴミのポイ捨てやマナー違反が全国各地で問題となっています。特にコロナ禍では、これらの問題に加えて密集回避の観点も重なり、多くの釣り場が閉鎖され、現在もなおその状況が続いています。
しかし、釣り場の環境やマナーの改善が進み、地域と釣り人が良好な関係を築くことができれば、釣りは単なるレジャーにとどまらず、地域に継続的な経済効果や交流をもたらす大きな可能性を秘めています。その理由の一つとして、釣り人には「同じ場所へ年間を通じて繰り返し訪れる」というリピーター特性があります。マナー問題をクリアした釣り人は、定住人口の増加が難しい地方自治体にとって、単なる観光客ではなく地域に深く関わり続ける「関係人口」として、地方創生の大きな力になり得ます。
こうした課題意識のもと、行政と釣具業界が連携し、釣り場の環境保全やマナー向上を推進するとともに、釣りを通じた地方創生の新たなモデルを創出することを目的として始動したのが、釣具メーカー・問屋など業界関係者を対象とした、イチバンエイトグループ主催の「インショアフィッシングトーナメント in 宮津」です。
本大会は、2024年に第1回、2025年に第2回を開催し、2026年6月23日・24日には、第3回大会を京都府宮津市で開催しました。
■ 地域の魅力を体感し、参加者の交流を深める前夜祭を開催
大会前日の6月23日には前夜祭を開催しました。開会式では、主催者を代表して八尾専務(イチバンエイトグループ)、業界を代表して橋本代表取締役(中央漁具株式会社)、谷山代表取締役(谷山商事株式会社)、さらに宮津市産業経済部商工観光課より歓迎の挨拶があり、本大会への期待と地域との連携の重要性が共有されました。

中央漁具株式会社 橋本代表取締役
その後、参加者は伊根湾クルーズに乗船し、日本を代表する景観である伊根の舟屋や豊かな海洋環境を体感しました。地域の自然や文化に直接触れることで、宮津・伊根エリアの魅力への理解を深めるとともに、この美しい環境を未来へつないでいくためには、釣り人一人ひとりのマナーと環境保全への意識が重要であることを改めて共有する機会となりました。

船上から見る伊根の舟屋 独特の情緒が参加者を魅了した


下船後は、地元食材を取り入れた夕食を囲みながら、チームごとに分かれて作戦会議や情報交換を行いました。競技に向けた戦略を共有するとともに、メーカー・問屋・小売店など立場を超えた交流を通じて参加者同士の結束が深まり、大会への機運が一層高まりました。



前夜祭の締め くくりには、八尾常務(イチバンエイトグループ)が「明日はいよいよ本番。安全第一を徹底し、業界の模範となる持続可能な釣りを実践しましょう」と挨拶し、参加者は翌日の大会に向けて決意を新たにしました。
■ 地域と共に実践した「持続可能な釣り」
6月24日、梅雨時期の貴重な晴れ間に恵まれた田井宮津ヨットハーバーには、業界の垣根を越えて46名の参加者と16名の運営スタッフが集結し、4~5名で構成された12チーム・12隻で大会が開催されました。出航に先立ち、各ボートの船長を対象に、安全面に関する認識を共有するためのミーティングを実施しました。宮津の海を熟知する現地スタッフから、危険箇所や進入禁止区域、最新の海況・釣果情報、緊急時の連絡体制などが説明され、安全を最優先とした大会運営に向けて認識の統一を図りました。


施設スタッフから船長に対して、丁寧な安全確認ミーティングが行われた
午前7時、スタートフィッシングの合図とともに、12隻のボートが一斉に田井宮津ヨットハーバーを出航しました。各チームは前日の作戦会議で練り上げた戦略や、船長が持つ豊富な経験、さらには当日の潮流や風向きなどの状況を踏まえながら、それぞれの狙いのポイントへと向かいました。大会が始まると、船上では「まずはキスから確実に数を揃えるか」「タイラバで大物を狙うか」といったチームごとの戦略が展開され、各艇で熱気あふれる駆け引きが繰り広げられました。
本大会ルールでは、タイラバとキスを対象魚とし、「船単位でタイラバ対象魚1匹、キス5匹を持ち込み、その内容をポイント化して順位を競う」形式を採用しました。単純な釣果数ではなく、持ち帰る魚の数を限定することで、必要以上のキープを抑制するとともに、小型魚の積極的なリリースを促す仕組みとし、水産資源への配慮と持続可能な釣りの実践を競技ルールそのものに取り入れています。
参加者は宮津の豊かな海から授かった恵みに感謝しながら、釣果だけを追い求めるのではなく、一匹一匹の価値を見極め、資源保全を意識した釣りを実践しました。大会を通じて、競技性と環境保全を両立させる「持続可能な釣り」の理念を、参加者一人ひとりが体現する一日となりました。







豊かな宮津の海で釣れる真鯛やキス
正午のストップフィッシングを迎えると、全12隻がトラブルなく帰港しました。桟橋に設けられた検量所では、各チームがルールに沿って厳選した釣果を持ち寄り、検量を実施。参加者同士が互いの釣果を称え合いながら情報交換を行うなど、競技の枠を超えた交流の輪が広がりました。
検量終了後には、地元の食材やソウルフードを取り入れた昼食会を開催しました。参加者は宮津ならではの食の魅力を味わいながら、大会を振り返るとともに、チームや企業の垣根を越えた交流を深めました。地域の食文化に触れ、現地で消費することも、本大会が大切にしている「地域とともに歩む大会づくり」の一つです。
昼食会に続いて行われた結果発表・表彰式は二部構成で実施しました。第一部では6位から12位までのチームを表彰した後、宮津市の城﨑雅文市長にご臨席いただき、ご挨拶を頂戴しました。続く第二部では、優勝から5位までの上位入賞チームの表彰を行い、市長自らプレゼンターとして賞品を授与し、入賞者を祝福していただきました。宮津市長から直接祝福を受けることで、本大会が行政と釣具業界の連携のもと、地域と一体となって開催されていることを参加者が実感できる、意義深い表彰式となりました。

宮津市の城﨑市長
優勝した【Gチーム】は、タイラバで釣り上げた4.8kgのマダイが決め手となり、第3回大会の頂点に輝きました。また、小型のキスを積極的にリリースしながら良型のみで勝負したチームや、タイラバでの一匹によって順位を大きく伸ばしたチームもあり、資源保全を意識した新ルールならではの戦略性とドラマが随所に見られる大会となりました。


■「持続可能な釣り」と「持続可能な地域づくり」の実現に向けたモデルケース


本大会では、競技だけでなく、地域との交流を深める機会を数多く設けました。前夜祭では伊根湾クルーズを通じて宮津・伊根エリアの豊かな自然や景観を体感し、グランピング施設での宿泊や、大会後の昼食では宮津のソウルフード「カレー焼きそば」を味わうなど、地域の魅力に直接触れるプログラムを実施しました。
これらの取組を通じて、参加者は釣りだけでなく、宮津の自然・食・文化への理解を深め、地域への愛着やつながりを育む機会となりました。宮津市がフィッシングショーOSAKAへ出展し、釣具業界が宮津市で大会を開催するという双方向の連携は、行政と業界が互いの強みを生かしながら地域の魅力を発信する、新たな地方創生モデルとしてその有効性を示す取組となりました。
大会を通じた一連の取組は、釣り場の環境保全やマナー向上を推進するとともに、地域での宿泊や飲食など現地消費を促進し、釣り人を継続的に地域へ呼び込む「関係人口」の創出にもつながりました。今後も宮津市と釣具業界が連携を深め、「持続可能な釣り」と「持続可能な地域づくり」の実現に向けたモデルケースとして、本取組を継続・発展させてまいります。
■ 宮津市と釣具業界が「持続可能な釣り場」をテーマに意見交換

未来の釣り場について真剣に意見を交わす座談会の様子
表彰式終了後には、宮津市と釣具業界による特別座談会を開催しました。テーマは「これからの釣り人と地域のあり方、持続可能な未来の釣り場」。宮津市と釣具業界双方が抱える課題や今後の展望について率直な意見交換が行われ、持続可能な釣り文化の実現に向けた連携の方向性を共有する貴重な機会となりました。
<座談会対談者>
・城﨑 雅文 氏(宮津市長)
・橋本 俊哉 氏(大阪釣具協同組合 理事長/公益財団法人 日本釣振興会 副会長 / 中央漁具株式会社 代表取締役)
・松浦 章 氏 (大阪釣具協同組合 副理事長 / 松浦テグス株式会社 代表取締役)
・魚矢 章博 氏(大阪釣具協同組合 理事 / 株式会社魚矢 代表取締役)
・土肥 正芳 氏(大阪釣具協同組合 理事 / 株式会社土肥富 代表取締役社長)
・八尾 栄一 氏(公益財団法人 日本釣振興会 理事 / フィッシングエイト株式会社 代表取締役社長)
テーマ①:【マナー悪化による釣り場閉鎖への危機意識の共有】
座談会では、近年深刻化している釣り人のマナー問題と、それに伴う釣り場閉鎖について意見が交わされました。
釣具業界からは、これまで稚魚の放流など資源保護活動に取り組んできた一方で、現在はゴミのポイ捨てやマナー違反を要因とした釣り場の閉鎖が大きな課題となっており、一度閉鎖された釣り場の再開は極めて困難であることから、業界全体としてマナー向上への取組を一層推進していく必要性が示されました。これに対し、城﨑市長からは、行政に寄せられる苦情の多くが、釣り人によるゴミの放置や小型ボートの無断係留などのマナー問題に関するものであるとの説明があり、行政と釣具業界が共通の課題認識を持って取り組む重要性が確認されました。
テーマ②:【“宮津市海洋つり場”の再開と、管理された釣り場の必要性】
続いて、現在閉鎖中である「宮津市 海洋つり場」の今後のあり方について意見が交わされました。
城﨑市長からは、「行政だけで釣り場を常時管理することには限界がある一方、公の海を閉鎖することは最終手段であり、可能な限り避けたい」との考えが示されました。また、「海洋つり場」については、ルールを明確に定め、利用者が適切なマナーのもとで安全に釣りを楽しめる『管理された釣り場』として再開・運営していくことが望ましいとの見解が示されました。
これに対し釣具業界からは、再開後の海洋つり場を、ルールやマナーを遵守する釣り人が集うモデルフィールドとして育て、行政と連携しながらマナー啓発や環境保全活動を推進していきたいとの考えが示されました。官民が協力して管理された釣り場を運営していくことは、持続可能な釣り場づくりを進める上で重要な取組であるとの認識が共有されました。
テーマ③:【ジェットスキー問題の成功事例に学ぶ官民連携のあり方】
マナー向上に向けた具体的な取組について、城﨑市長からは、宮津市におけるジェットスキー利用時の騒音やマナー問題への対応事例が紹介されました。当時、行政と事業者が連携して自主ルールを策定し、利用者への啓発活動を継続的に実施した結果、利用環境の改善につながった経緯が説明されました。この事例を踏まえ、市長からは「釣りにおいても、行政と釣具業界が連携し、一体となってマナー啓発を進めることが課題解決への重要な鍵となる」との考えが示されました。これを受け、釣具業界からも、行政と連携した継続的な啓発活動を通じて、釣り人のマナー向上と釣り場環境の保全に取り組んでいく考えが示されました。官民がそれぞれの役割を担いながら協力して取り組むことが、持続可能な釣り場づくりと地域振興の実現につながるとの認識が共有されました。
■ 座談会を通じて共有された官民連携の方向性
本座談会では、釣具業界と宮津市が「持続可能な未来の釣り場の実現」という共通目標のもと、率直な意見交換を通じて課題や方向性を共有するとともに、今後も継続的に連携を深めていくことを確認しました。大会の開催にとどまらず、行政と釣具業界が一体となって釣り文化の発展と地域振興に取り組む官民連携の方向性を共有する機会となりました。
■ 宮津から全国へ 地方創生の新たなモデルとして

釣りは、単なるレジャーにとどまらず、地域との継続的な関わりを生み出す「関係人口」を創出し、地方創生を推進する大きな可能性を秘めています。釣り人が繰り返し地域を訪れ、宿泊や飲食、地域での消費を通じて地域経済に貢献し、行政は釣り人を積極的に受け入れ、その魅力を発信する。こうした双方向の連携は、地域と釣り人が共に価値を高め合う新たな関係を築くものです。
宮津市におけるこの取組は、まさにこうした関係性を体現するものの一つです。宮津市と釣具業界が協力して進めてきた両者の連携は、釣り場の環境保全とマナー向上を推進するとともに、地域の活性化にもつながる官民連携のモデルとして、大きな可能性を示しました。豊かな海と魚という貴重な自然環境を未来へ継承しながら、誰もが安心・安全に釣りを楽しめる環境を育んでいくことは、地域と釣具業界が共に果たすべき使命です。
ここで構築された官民連携の取組が、釣りを活用した地方創生と持続可能な釣り文化のモデルケースとして全国へ広がり、各地域における新たな取組へと発展していくことが期待されます。宮津市と釣具業界は、今後も互いの強みを生かしながら連携を深め、地域と釣り人が共生する釣り場づくりの実現に取り組んでまいります。
■ 取材・撮影協力【田井宮津ヨットハーバー】

日本三景・天橋立を望む宮津湾に位置するマリンリゾート
釣りやクルージング、BBQ、グランピングなど、海の魅力を満喫できる総合レジャー施設です
■ 住所
〒626-0068 京都府宮津市田井277-1
■ アクセス
宮津天橋立ICから車で約15分
■ 駐車場
入庫後24H 500円
※グランピング/アクティビティ/BBQ利用、ボートオーナー様/クラブ会員様は無料
■ 公式HP
https://tai-miyazu-yachtharbor.jp
■ 田井宮津ヨットハーバー
